Background
背景
地域や施設、店舗など、「場」に紐づくプロデュース事業を展開するVOID社による、鳥取県智頭町の地方創生プロジェクト。
江戸時代に因幡街道の宿場町として栄えた智頭宿に、新たな甘甘味処とギャラリーを併設した新拠点「智頭宿 因」が開業することに伴い、そのブランドアイデンティティの制作を担当しました。
拠点となるのは、鳥取県八頭郡智頭町の備前街道沿いに残る、国登録有形文化財「旧塩屋出店」。歴史ある建築を活用し、甘味処とギャラリーを併設した新たな交流拠点として、2025年9月24日にオープンしました。
「智頭宿 因」は、かつて旅人が行き交い、休息や交流を重ねた智頭宿の歴史を現代へと引き継ぐ場所です。過去の面影を保存するだけではなく、土地に蓄積された文化や時間を受け継ぎながら、新たな人や表現との関係を育てていく。その場所の「顔」にふさわしい、歴史性と現代性を備えたアイデンティティが求められました。

Concept
コンセプト
人と土地が結ばれる、新たな「因」をつくるーー「因」という文字には、物事が生まれるきっかけや起点、その背景となる理由という意味があります。
かつて宿場町として多くの旅人を迎えてきた智頭宿もまた、人と土地、人と文化、人と人との関係が生まれる、さまざまな「因」が重なる場所だったと捉えました。
甘味を味わうこと。作品に触れること。歴史ある建築や町並みのなかで時間を過ごすこと。ここで生まれる一つひとつの体験が、訪れる人と智頭との新たな関係をつくるきっかけとなっていきます。
土地の歴史をそのまま再現するのではなく、智頭宿に受け継がれてきた交流の記憶を、これから始まる関係の起点として捉え直すこと。名称に込められた「因」の意味を、施設の役割と結びつけながらブランドの軸としました。

Design
デザイン
シンボルは、複数の帯状の形が折り重なり、ひとつの輪郭を形成する有機的な構造で設計しています。
人や文化、時間、土地といった異なる要素が交差し、関係を結びながらひとつの場所を形づくっていく。その様子を、黒い面の重なりによって、抽象的に表現しました。
全体の輪郭には、家紋や印章を思わせる象徴性と安定感を持たせています。一方で、内部には一定の流れや揺らぎを残すことで、歴史ある宿場町としての静かな佇まいと、これから新しい人や活動を迎え入れる開かれた印象を両立させました。




ロゴタイプには、明朝体を基調とした縦組みを主要アセットとして採用しました。漢字の持つ端正さや歴史性を生かしながら、細身の欧文表記を添えることで、伝統的な印象へ寄りすぎない現代的なバランスを整えています。
同プロジェクトで展開される「智頭宿 回」とは、共通した造形原理を持たせながら、内部の線や面の動きによってそれぞれの個性を表現。各施設が独立した存在として認識されると同時に、ひとつの思想から生まれた拠点であることが伝わる、連続性のあるアイデンティティとして設計しました。

宿場町の歴史を直接的な意匠として引用するのではなく、智頭宿が育んできた人の流れや関係性を、現代の造形へと翻訳する。静かな象徴性のなかに、これから生まれる交流の気配を内包したブランドアイデンティティ開発プロジェクトです。









Credit
Client:Chizu Forestry Landscape Conservation and Utilization Promotion Council
Produce:Yusuke Mizobata, Hikari Murashima(VOID INC.)
Design:Yurika Omoto(COYOTE)
Photography:Riki Shinagawa